不眠症とは何か?
不眠症は、睡眠の質や量が不足し、日中の活動に支障をきたす状態を指します。
具体的には、寝つきが悪い(入眠障害)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、早朝に目が覚めてしまう(早朝覚醒)、熟睡感がない(熟眠障害)などの症状が挙げられます。これらの症状が週に3日以上あり、3ヶ月以上続く場合に不眠症と診断されることが多いです。
日本では、成人の約20%が不眠症状を訴えており、特に高齢者においては30-40%と高い割合で不眠の問題を抱えています。不眠は単なる睡眠の問題だけでなく、日中の疲労感、集中力低下、気分の落ち込み、免疫力の低下など、心身の健康に様々な影響を及ぼします。
なぜ高齢者は不眠症になりやすいのか?

高齢者が不眠症になりやすい理由には、生理的・心理的・環境的な要因が複合的に絡み合っています。
生理的要因
- 睡眠構造の変化:加齢とともに深い睡眠(徐波睡眠)の割合が減少し、浅い睡眠が増えることで、目覚めやすくなります。
- 体内時計の変化:体内時計を調整するメラトニンの分泌が減少し、睡眠・覚醒リズムが乱れやすくなります。
- 身体疾患の増加:関節痛、夜間頻尿、呼吸器疾患など、睡眠を妨げる身体症状が増えます。
心理的要因
- ストレスや不安:退職、配偶者との死別、社会的役割の喪失などによるストレスや不安が睡眠に影響します。
- うつ症状:高齢者のうつは不眠を伴うことが多く、相互に影響し合います。
環境的要因
- 活動量の減少:日中の身体活動や社会的交流の減少により、夜間の睡眠欲求が低下します。
- 日光曝露の減少:室内で過ごす時間が増えることで、体内時計を調整する日光の影響が減少します。
不眠症を東洋医学ではどう見るのか?

東洋医学では、不眠は精神活動を司る「心気」の乱れから生じると考えます。
心気が調和を保ち、その機能を健やかに発揮するためには、心の活動を支え、調整する「血」と「潤い(津液)」が欠かせません。これらが様々な要因によって不足すると、心気は安定を失い、いわば空回りの状態となり、不眠という形で現れるのです。
特に高齢者においては、身体の根源的なエネルギーである「腎気」の変化が重要な意味を持ちます。東洋医学の視点では、加齢とともに身体の基盤となる腎気は徐々にその力を弱め、腎気によって支えられていた全身の機能は自然と衰えていきます。
腎と心は互いに深く関わり合う関係にあるため、腎気の衰えは心気の安定にも影響を及ぼします。そのため高齢者では、腎気の変化が引き金となって心気の乱れがより生じやすくなり、不眠へと繋がるのです。
古来より東洋医学は、このような心と身体の繊細な関係性を理解し、全体のバランスを整えることで健やかな眠りを取り戻す智慧を培ってきました。
主な不眠のタイプ(証)
- 心火亢盛(しんかこうせい):精神的ストレスや怒りが過剰になり、「心」に「火」がつくような状態。イライラして寝つけない、夢を多く見るなどの症状があります。
- 肝鬱気滞(かんうつきたい):肝の気の流れが滞ることで、精神的な緊張や苦悶感が生じます。考え事が多く、気分が落ち込み、寝つきが悪くなります。
- 脾虚痰飲(ひきょたんいん):消化器系の不調により、腹部膨満感や不快感があり、それが睡眠を妨げます。食後に特に眠気を感じたり、夜中に目が覚めたりします。
- 心脾両虚(しんぴりょうきょ):心と脾の機能が低下し、気血が不足した状態。不安感や動悸があり、眠りが浅く、疲れやすいといった症状が現れます。
- 心腎不交(しんじんふこう):腎の機能が低下したために、心を潤すことができなくなって、相対的に心の陽気が亢進した状態。腎の機能が低下することで冷えとして現れる場合や、熱として現れる場合に分かれることがある。
東洋医学では、これらの「証」に基づいて治療法を選択します。単に「眠れない」という症状だけでなく、舌の状態、脈の状態、顔色、体質など、全身の状態を総合的に判断して治療方針を決定します。
高齢者の不眠症を解消する方法とは?

東洋医学的アプローチによる不眠症の改善方法をご紹介します。
1. 生活習慣の調整
- 規則正しい生活リズム:毎日同じ時間に起床し、就寝することで体内時計を整えます。
- 適度な運動:ウォーキングや太極拳などの穏やかな運動を日中に行うことで、夜間の睡眠の質を高めます。
- 食事の工夫:夕食は就寝の3時間前までに済ませ、消化に負担のかからない食事を心がけます。
- 入浴:就寝の1-2時間前に38-40度のぬるめのお湯に浸かり、体を温めることで睡眠を促進します。
2. 環境調整
- 寝室環境:静かで暗く、適温(約26℃)の環境を整えます。
- 光環境:朝は明るい光を浴び、夜は暖色系の照明に切り替えることで、メラトニン分泌を調整します。
- スマートフォンやパソコン:強い光の刺激が睡眠を妨げるため、就寝前の使用を控えます。
3. 心身のリラックス法
- 腹式呼吸:丹田に意識を集中し深くゆっくりとした呼吸を繰り返すことで、自律神経のバランスを整えます。
- 瞑想:呼吸に意識を集中し、雑念に気が付いたら、また呼吸に戻す練習をすることで、入眠しやすくなります。
- 温熱療法:温かいタオルで目や首筋を温め、血行を促進します。
不眠症に使われることの多い漢方薬

体質や症状のパターンに合わせて、以下のような漢方薬が処方されることがあります。
- 心火亢盛(しんかこうせい):
- 天王補心丹
- 柏子養心丸
- 黄連解毒湯
- 肝鬱気滞(かんうつきたい):
- 大柴胡湯
- 抑肝散加陳皮半夏
- 加味逍遥散
- 脾虚痰飲(ひきょたんいん):
- 半夏白朮天麻湯
- 温胆湯
- 香砂六君子湯
- 心脾両虚(しんぴりょうきょ):
- 帰脾湯
- 加味帰脾湯
- 温経湯
- 心腎不交(しんじんふこう):
- 八味丸
- 六味丸
- 桂枝加朮附湯
不眠症に使われることの多いツボ

ツボ療法(指圧やマッサージ)も、不眠症の改善に効果的です。就寝前に以下のツボを刺激してみましょう。
①神庭(しんてい)のツボ
髪の生え際の真ん中から少し上(0.5寸=約1.5cm)にあります。
息がしやすくなったり、心を落ち着かせたり、頭をすっきりさせる力があります。
このツボを指で押すと、少し楽になることがあります。

②印堂(いんどう)のツボ
両方の眉の始まりを線で結んだところと、顔の真ん中を通る線が交わるところにあります。
体の熱を冷まし、心を落ち着かせ、目をすっきりさせる力があります。
眠れない人や、物忘れがひどい人に効果があります。

③安眠(あんみん)のツボ
首の後ろの頭の下の部分にあります。
心を静かにし、熱を冷ます力があります。
眠れないときや、頭が痛いとき、どきどきするとき、めまいがするときに使えます。

これらのツボを優しく指で押さえるか、小さな円を描くようにマッサージします。強い刺激は逆効果になる場合があるので、心地よい程度の力加減で行いましょう。
不眠は高齢者の生活の質に大きく影響する問題ですが、東洋医学的なアプローチを取り入れることで、薬に頼りすぎることなく改善できる可能性があります。
ただし、重度の不眠や他の健康問題を伴う場合は、必ず医師に相談してください。東洋医学と西洋医学を適切に組み合わせることで、より効果的な改善が期待できます。
訪問マッサージや漢方のサービスを受けるには?
体調の改善には、定期的なケアが重要です。
訪問マッサージでは、自宅でリラックスしながら施術を受けられるため、無理なく続けられます。

また、漢方薬は体質に合わせて選ぶことが大切です。

当店では、不眠に関する相談を含め、漢方相談と訪問マッサージの両方を行っています。
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