「足がむくんで靴が入らない」「朝と夕で顔つきが違う」など、高齢者の方々からよく聞かれる浮腫みのお悩み。実は、これは単なる不快感だけでなく、健康状態を映し出すサインかもしれません。
浮腫みは高齢者に特に多く見られる症状です。日常生活に支障をきたすだけでなく、放置すると深刻な病気を隠している可能性もあります。
当院の訪問マッサージでは、東洋医学の知恵を活かした浮腫みケアを提供しています。寝たきりや歩行困難な方でも、ご自宅で実践できる方法をご紹介します。
浮腫みとは何か?

浮腫み(むくみ)とは、体内の水分バランスが崩れ、通常より多くの水分が皮膚の下に溜まる状態です。特に足、手、顔、ふくらはぎなどに現れます。
健康な人でも、長時間同じ姿勢でいたり、塩分の多い食事を摂ったりすると一時的に浮腫むことがあります。しかし高齢者の場合は、一時的ではなく慢性的に浮腫みが続くことが多いのです。
浮腫みが痛みや不快感、皮膚トラブルの原因となったり、重症化して歩行困難を引き起こしたりすることもあります。
浮腫みを東洋医学ではどう見るのか?

東洋医学では、浮腫みは体内の水分代謝の異常と捉えます。西洋医学が「何が原因で浮腫みが起きているか」を重視するのに対し、東洋医学では「どの臓腑の機能が低下しているか」に注目します。
東洋医学的な浮腫みの見方
体内の水分循環は、東洋医学的には精緻なシステムで成り立っています。以下に、このプロセスをわかりやすく解説します。
体内水分の基本的な流れ
- 体内の水分は自力では動けず、体の芯部の熱(腎陽)によって温められることで動きの原動力を得る
- 温められて軽くなった水分は、肝気と脾気の連携によって体の上部にある肺まで持ち上げられる
- 肺から「雨のように」全身へ降り注ぎ、体全体を潤しながら循環する
水分循環の詳細プロセス
- 水分の摂取と活性化
- 飲食物から摂取した水分は、体内の既存の水分と合わさる
- 腎陽(腎臓の熱エネルギー)によって温められ、動き始める
- 上昇のメカニズム
- 脾気:血管やリンパの弾力性を維持する役割
- 肝気:神経系を調整する役割
- この二つの気の連携によって、水分は体の上部へと運ばれる
- 循環と下降
- 肺気の領域(体の上限)に到達した水分は二つに分かれる
- 一部は体外へ放出(汗や呼気など)
- 残りは折り返して体内を下降し、内臓を潤しながら循環する
水分循環の乱れと浮腫みの関係
- 肝気、脾気、腎陽、肺気のいずれかの働きが乱れると、水分循環が滞る
- 循環が滞った水分は体内に停滞し、浮腫み(むくみ)として現れる
- 漢方薬やマッサージなどはこれらの流れを整え、水分循環を促進できる
この東洋医学的な水分循環の考え方は、現代の訪問マッサージにも活かされています。身体の各部位の「気」の流れを整えることで、むくみの改善や全身の調和を図ることができるのです。
高齢者の浮腫みを解消する方法とは?

高齢者の浮腫みを解消するためには、西洋医学と東洋医学の両方からアプローチすることが効果的です。まずは、原因となる疾患がないか医師に相談することが大切です。その上で、以下の方法を日常生活に取り入れてみましょう。
生活習慣の改善
- 塩分制限:
- 塩分の摂りすぎは水分貯留を促進します
- 1日の塩分摂取量は6g以下を目安にしましょう
- 加工食品や外食には塩分が多く含まれていることに注意してください
- 適度な運動:
- 軽い運動で筋肉のポンプ作用を高めましょう
- 寝たきりの方は、ベッド上でできる足首の屈伸運動も効果的です
- 無理のない範囲で、1日10分程度から始めてみましょう
- 姿勢の工夫:
- 長時間同じ姿勢を避けましょう
- 横になるときは、足を心臓より高い位置に上げると効果的です
- 車椅子の方は、30分ごとに足首を動かす習慣をつけましょう
- 着圧ソックスの活用:
- 医療用弾性ストッキングを使用すると、静脈の血流が改善されます
- 朝、起きてすぐに履くのがポイントです
食事療法
東洋医学では、食材にも薬膳的な効能があると考えます。浮腫み改善には、以下の食材が効果的です:
- 利水作用のある食材:
- 小豆、とうもろこし、冬瓜、きゅうり、スイカなど
- これらには余分な水分を排出する効果があります
- 脾を強化する食材:
- かぼちゃ、山芋、大豆、はと麦、きび、米など
- 消化吸収機能を高め、水分代謝を促進します
- 腎を強化する食材:
- 黒豆、黒ごま、くるみ、栗、羊肉、しじみなど
- 腎機能を高め、水分排泄を促します
例えば、「小豆と冬瓜のスープ」は、古くから浮腫みに効果があるとされています。小豆は「小豆煮汁」として飲むだけでも効果が期待できますよ。

マッサージ・ツボ刺激
自宅でできる簡単なマッサージも浮腫み解消に効果的です:
- リンパマッサージ:
- 末端から心臓に向かって、優しく圧をかけながらさすります
- 力を入れすぎず、痛気持ちいい程度の圧で行いましょう
- 足浴:
- 38〜40℃のお湯に10〜15分つかります
- 血行が促進され、余分な水分が排出されやすくなります
- 入浴が難しい方は、足浴だけでも効果があります
- 訪問マッサージの活用:
- 専門家による適切なマッサージは、浮腫み改善に非常に効果的です
- 寝たきりの方や自分でケアが難しい方には特におすすめです
- 医師の同意があれば、保険適用で受けられる場合もあります
訪問マッサージでは、東洋医学の理論に基づいた全身のバランス調整を行います。浮腫みだけでなく、全身の血液循環やリンパの流れを改善し、根本的な体質改善にアプローチします。
浮腫みに使われることの多い漢方薬

東洋医学では、浮腫みの「原因」に合わせて漢方薬を使用します。以下に代表的な漢方薬をご紹介します。
五苓散(ごれいさん)
効能: 利水作用があり、むくみや水分代謝の異常を改善します。
五苓散は停滞した余分な水分を身体の外へと排除してくれる漢方薬です。腎陽の働きを盛り立てながら、水を身体の外へと誘導し、尿量を増やして余分な水分を排出する効果があります。顔や手足のむくみだけでなく、めまいや頭痛を伴う場合にも効果的です。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
効能: 利水作用に加え、気を補う効果があります。
防已黄耆湯は、腎気、脾気、肝気、肺気に働きかけて、水の巡りを整える漢方薬です。肥満傾向の方にもよく用いられます。
猪苓湯(ちょれいとう)
効能: 利尿作用があり、水分代謝を改善します。
猪苓湯は、局所に停滞した水分の排出と共に、こもった熱を冷ます働きもあります。尿路感染症の症状を伴う場合にも有効とされています。
真武湯(しんぶとう)
効能: 体を温め、水分代謝を改善します。
真武湯は「腎陽虚」による浮腫みに効果的です。体が冷えて疲れやすい高齢者に適しています。特に手足の冷えを伴う浮腫みに効果があります。
浮腫みに使われることの多いツボ3つ

ツボ刺激は、自宅でも簡単に行える浮腫み対策です。以下に、浮腫みに効果的な3つのツボをご紹介します。
①三陰交(さんいんこう)
足首の内側、くるぶしから指4本分(約3寸)上の脛骨の後ろ側にあります。
三陰交は、寝たきりの高齢者でも介助者に押してもらいやすい場所にあります。浮腫みだけでなく、足のだるさや冷えにも効果があるので、総合的な下肢の不調改善にも役立ちます。

②太渓(たいけい)
足首の内側、内くるぶしと足のアキレス腱の間のくぼみにあります。
太渓は、東洋医学で「腎経」のツボとされ、腎機能の低下による浮腫みに特に効果があります。高齢者に多い下肢の浮腫みに対して、即効性がある場合も多いです。

③陽陵泉(ようりょうせん)
膝の外側、腓骨頭の下前方のくぼみにあります。
陽陵泉は、膝の曲げ伸ばしをすると見つけやすいツボです。下肢の浮腫みだけでなく、膝の痛みがある高齢者にもおすすめです。浮腫みと関節痛の両方にアプローチできる便利なツボと言えます。

これらのツボは、1日に数回刺激するとより効果的です。痛みを感じるほど強く押す必要はなく、心地よい刺激を与える程度で十分効果があります。自分で押せない場合は、ご家族やケアをする方に押してもらうのもよいでしょう。
訪問マッサージや漢方のサービスを受けるには?
体調の改善には、定期的なケアが重要です。
訪問マッサージでは、自宅でリラックスしながら施術を受けられるため、無理なく続けられます。

また、漢方薬は体質に合わせて選ぶことが大切です。

当店では、体質に関する相談を含め、漢方相談と訪問マッサージの両方を行っています。
漢方相談をご希望の方は、コチラから。タイプに合わせた漢方薬のご提案が可能です。

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